第1回展


合図

大石一貴 齋藤春佳 張小船Boat ZHANG

2024年4月6日(土)~ 5月12日(日)
12:00~19:00(金・土は20:00 まで)火曜休場


この度、Up & Comingではこけら落としとしての展覧会「合図」を開催します。

街を歩くからだがそのまま作品を作り、街を歩くからだがそのまま作品を見る。
展覧会の会場で、人々はそれぞれが別のコンテキストを持ち寄っている。
Up & Comingの建物は外苑前エリアに位置し、今まで展覧会の会場としては使用されてこなかったスペースです。この展覧会を契機に、ここに来る人は作品を見ることになる。
本展は大石一貴、齋藤春佳、張小船Boat ZHANGの3名の作品によって世界に対してスタートの「合図」を送る展覧会です。

大石一貴は物質や文字や空間の諸要素を彫刻家として扱います。たとえば湿気までもを作品の構成要素とする時、乾ききっていない土の立体が湛える水分とそこに刻まれた詩によって、展示会場からは見えない海岸のイメージが鑑賞者を経由して会場へ流れ込む。その言葉の粒と砂の一粒が重なるのは、個別の物質や出来事が人の知覚を経由して現れているからこそです。それでいて、時にその作品の射程は鑑賞者の目を通過し後方へ遠ざかる宇宙まで達します。

齋藤春佳は身の回りで起きた事象を日常生活では捉えきれない多次元的時空構造と結び付けた絵画やインスタレーションを制作します。その作品経験は鑑賞者と作品の間に生起し、繰り返し再生可能でありつつも過去の自分とすら同じ経験をすることはできないことから、見る行為者の現在地がその都度見つめ返されます。

張小船Boat ZHANGは日常生活における些細な感情や違和感からパフォーマンス、映像、テキストなどによってアクションを起こします。社会を生きる鑑賞者である私たちは、その逸脱によって脅かされもしますが、その仕草が含むユーモアに導かれて思わず微笑む時、自ずから密かに作品と共犯関係を結びもします。

合言葉、狼煙、サイン、信号、痕跡。
「合図」にはその取り決めを知らない他者には意味がわからないという特徴があります。
それでも、作品が放つ「合図」は世界のどこかと結ばれている。
今から100年後のどこか。
地球から3光年先のどこか。
あるいは時間や距離では測れないかたちの、どこか。
目の前のあなた。
発された「合図」を受け取るもう一方の末端がある。

それぞれ別のコンテキストを持ち寄って会場に辿り着いた人が、作品の放つ「合図」を読み取るための取り決めを手にしていないまま受け取ることになるのはある意味当然で、それでいて、神経細胞が「合図」に向かって手を伸ばしていくうちにその受容器が新たに形作られていくこともある。晴れた朝の見えない花火の音によって今日運動会がどこかで開催されると知ることはできるので、その「合図」の受取手である運動会の主役とは異なる次元で空を眺めるように、ある程度のコンテキストの一致を元に作品と関係を結ぶこともある。作品の放つ「合図」に呼応するのは作者ではなく鑑賞者である可能性もある。展覧会の会場で作品と鑑賞者が出会う。

これからここではいろんなことがある。
これまでになかったことがある。
その起点として3名の作品が放つ「合図」を是非ご鑑賞ください。

(齋藤春佳)

Contents

Artists

大石一貴

OISHI Kazuki

1993年山口県生まれ。彫刻家。武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了。自他の持つ断片的な経験の時空間と、それを知覚させる物理的な事象に着目し、彫刻・インスタレーション・映像・詩などのメディアを横断しながら制作と発表を続けている。
主な個展に「石と文字」秋川河川敷某所(東京・2023年)、「Voyager is with you」Art Center Ongoing(東京・2022年)、「For instance, Humidity」sandwich (CFP)(ブカレスト・2022年)、主なグループ展に、武田龍/大石一貴「HANNAH」 parcel(東京・2024年)、「血は水よりも濃い、何も分かってないのかもしれないから、庭の隅の手作りの洞窟で、くらくけずられた豆腐歯はこなごなにしたたり冷蔵飛び石の形に集まってななめに流れ出すまで」TALION GALLERY(東京・2023年)、「群馬青年ビエンナーレ2019」群馬県立近代美術館(群馬・2019年)など。

《石と文字》2023年 撮影:comuramai

齋藤春佳

SAITO Haruka

1988年長野県生まれ。2011年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。「重力や物体の運動エネルギーの総体が便宜的に時間と呼ばれているだけ」という立ち位置から、出来事を時空間の構造と結び付けた絵画、立体、インスタレーション、映像などを制作。主な展覧会に「レター/アート/プロジェクト『とどく』」渋谷公園通りギャラリー(東京・2022年)、都美セレクショングループ展 2020「描かれたプール、日焼けあとがついた」(日焼け派)東京都美術館(東京・2020年)、「立ったまま眠る/泳ぎながら喋る」Art Center Ongoing(東京・2020年)、「飲めないジュースが現実ではないのだとしたら私たちはこの形でこの世界にいないだろう」埼玉県立近代美術館(埼玉・2017年)など。グループ活動に「日焼け派」、「此処彼処」、「Ongoing Collective」。バンド活動「ほいぽい」。

《星は見つめかえさない もしくは見つめかえす 電話をかけた人は 電話に出ない人が かけた電話に 出ない人》2021年

張小船Boat ZHANG

Boat ZHANG

1983年中国生まれ。2007年ロンドン大学・ゴールドスミス修了。主に東京と上海を拠点として活動。ストレンジ・ユーモアを持って、個人的な経験や感情をもとに、コンセプチュアル、パフォーマンス、イベント、映像、イメージ、サウンド、テキストなどを自由に扱って、ユニーク且つ普遍的な状況に、即興的に対応しようとしている。「VOCA展 2022」上野の森美術館(東京・2022年)、「第12回上海ビエンナーレ」上海当代芸術博物館(上海・2018年)など中国、日本、イギリス、キューバで展示している。2021年松本力賞。2019年「Jimei x Arles Discovery Award」ファイナリスト。作品は上海当代芸術博物館、Asia Art Archiveなどに収蔵されている。対馬や室蘭など、日本各地の地域アートプロジェクトにも参加している。アーティストグループ「row&row」、「・・」、「チームやめよう」のメンバー。たまにはコーヒー代のために文章も書いている。主な個展に「そうぞう 力 なくなった!? Lonely Consumer」旧横田医院(HOSPITALE PROJECT・鳥取・2023年)、「無断企画展:かえれないわたしたち」Art Center Ongoing(東京・2022年)、「iPhoneの葬式」ギャラリートラック(京都市内・2020年)。

《日光浴療法:マンションに面す、山に面す: 屋上ビーチ(監視カメラの下で)》

 

Events

パフォーマンス
張小船Boat ZHANG「スマイル練習」

4月21日(日)15:00〜

トーク
「作品が放つ合図」

4月21日(日)16:00〜
ゲスト:栗原一成

展示とは何かしらの合図が生じる所作です。異なるコンテキストの体を持ち寄った展示会場で、作品から何を受け取っているのか?作家3人とゲストによるトーク。

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