第9回展


花へ、ふたたび問ふこと。

曽田萌 髙野真子 宮林妃奈子 山口彩紀

2025年4月4日(金)~ 5月12日(月)
12:00~19:00(金・土は20:00 まで)火曜休場


21世紀のこの世に、芸術作品を解き放ち、作品を通して自ら社会へ語りかけるためには、私たち現代作家は、これまで以上に自身の「こころ」の根源的な部分を問いただすような営為が必要であると感じている。
そのような背景から自身の根源的な意識を探ったとき、同じ星で、同じ女性として、同じ地を歩いた作家が残した言葉や生き様、芸術作品としてさまざまな形態で残された結晶は、現代作家である私たちの根源的な「こころ」の結びつきとして、貴重な存在となっている。
本展の出品作家が影響を受けた作家として、ジョアン・ミッチェル、ヒルマ・アフ・クリント、茨木のり子、片岡球子、辰野登恵子、宮脇綾子などが上げられる。
先人たちの強い精神性が表れた作品を目の前にしたとき、まるで作者がそこに実在するかのような神秘的な体験が生まれる。
ときには、戦争や貧困、差別など厳しい社会情勢の中で苦しみながらも生き抜き、己と向き合った形跡の積み重ねには、「個性」というかけがえのないものが生まれていく。
詩人による社会の現実を突き刺すような言葉には、独自の人生観を貫き通して生きた姿が言葉や音として心に響く。画家が苦悩の果てに絞り出した色彩には、心の豊かさが垣間見える。
芸術家は、社会の変動に柔軟な鋭さを与え、色を付ける。作者がこの世にいなくなっても芯のある精神性から生み出された作品は、光を放ち続けている。姿を消して、また現れる蝶のように今もなお、この世に飛び交っている。

原野を感じさせる色彩と大胆な筆致で、まるで地を開拓していくかのような絵画を逝去する103歳まで描き続けた片岡球子(1905~2008)※は、「描くことは心の豊かさを見つけ出せることである」という信念をもたらし、片岡の絵画作品からは、命が尽き果てるまで独自の表現を貫くことの壮麗さを感じさせられる。

私たちには、複雑な社会問題を抱えた現代を生きていくための原動力が必要である。現在も語り継がれる女性作家たちの生きた証の集積は、人から人へと間接的に影響を与えて現代社会へと引き繋がれ、いまを生きる私たちの原動力となる。また、時代を超えて生き続ける芸術作品として、私たちの「生の根幹」となり、新たな木を生み出そうとしている。
本展は、出品作家それぞれの感性などを通して、根源的な精神性という観点から「表現の根本」を再認識することを目的としている。

※片岡球子(1905~2008)北海道出身の日本画家。日本芸術院を中心に活動。『富士』や『面構』などをモチーフに従来の日本画の描き方から逸脱したような大胆な筆致の絵画作品を残し、当時の画壇を中心に新たな風を吹かせた。

 

Contents

Artists

曽田 萌

SODA Akari

《浮遊する庭》
2024、 キャンバス、油絵具、蜜蝋、植物、 ミクストメディア、 160×320×2 cm
Photography by Huang Min

花屋で働いていた経験から、植物が人にもたらす感情や身体表現を絵画やパフォーマンスで表現することを試みており、植物を通して死生観を研究している。

1997 広島生まれ
2021 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2021-2022 美学校、現代アートの勝手口受講
2024- 秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科在籍

個展
2019 「だめ展」gallery niue、東京

グループ展
2018 アタミアートウィーク、熱海市内、静岡
2020 「可愛い子には旅をさせよ」gallery niue、東京
2021 「clark hack letter」GALLERY 33 SOUTH、東京
2022 「波のゆくさき」美学校ギャラリー、東京

 


髙野 真子

TAKANO Mako

《I was born》
2022、映像

自身の子宮内膜症という病気をきっかけに、生命倫理、生命の産み生まれる関係性について、映像作品を通して当事者としての意識を呼び起こそうとしている。

1999 東京都に生まれる
2022 東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業
2024 同大学院修了

活動
2019 Furukawa Lab「あるく!空間楽器コンサート」 
2020 Furukawa Lab「あるく!空間楽器コンサート」 
    二人展「今日は朝から夜だった、目をつむると見えてきた」藝大食堂ギャラリー、茨城
2021 「のぞいてみよう、でんちゅうさん家の芸術っこ」旧平櫛田中邸アトリエ、東京
2022 「コミテコルベールアワード2022-The beauty of imperfection- 展」優秀作品 東京芸術大学大学美術館、東京
2023 「KUMA experiment Vol.9『pneuma ─息衝く─』」六本木クマ財団ギャラリー、東京
2024「もじる」グループ展 金城市場、愛知

受賞
2022 「コミテコルベールアワード2022-The beauty of imperfection- 展」優秀作品 

 


宮林 妃奈子

MIYABAYASHI Hinako

《雲の根っこ》
2024、綿布、油絵具、木炭、194×162×3cm
Photography by Takahiro Tsushima

日課としているドローイングの連動性を手がかりに、作品を粒としてとらえ、支持体と描画材の必然的な関わり方を研究している。

1997 北海道生まれ
2021 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2023 ベルリン芸術大学美術学部卒業、Thilo Heinzmannよりマイスターシューラー取得
2025 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了

個展
2023 「Hinako Miyabayashi」Galerie Bernd Kugler、インスブルック
2024 「うみの背なか」板室温泉大黒屋、栃木
   「土に隠れた文字のしっぽ」Gallery 38、東京
   「project N 93 宮林 妃奈子」東京オペラシティー アートギャラリー、東京

グループ展
2023 「Traces」Galerie Guido W. Baudach、ベルリン
    「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京
2024 「第2回BUG Art Award ファイナリスト展」BUG、東京
   「DRAW LINES & SHAPES IN MY MAPS」T & Y Gallery、ロサンゼルス

受賞
2021 「アートアワードトーキョー丸の内2021」建畠晢賞
   「多摩美術大学卒業制作展 令和2年度」福沢一郎賞受賞

 


山口 彩紀

YAMAGUCHI Saki

《赤い湖》
2022、キャンバス、油絵具、130.3×130.3cm

近年は、「すでに消えてしまったものの気配を辿る感覚をたよりに絵を描くこと」を背景に絵画制作に取り組んでいる。

1998 札幌生まれ
2021 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2023 多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域修了

個展
2023 「月を着たドレス」Gallery Cafe 3、東京
2025 「磯焼けのつぼから花びらがあふれ出る」フリュウ・ギャラリー、東京

グループ展
2021 「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館、東京
   「Emerging Artists 2021展-Part1」GalleryQ、東京
   「第21回三井不動産商業マネジメント・オフィース・エクスビション」浜町センタービル、東京
   「プシュケの小石を愛でる」gallery TOWED、東京
   「Exhibition of two artists Reina Kozasa & Saki Yamaguchi」ニューオータニイン札幌、北海道
2022 「Golden egg exhibition 2022」SAN-AI GALLERY、東京
2023 「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」国立新美術館、東京
   「スクエア ザ・ダブル16」フリュウ・ギャラリー、東京 

受賞歴
2015 「70周年記念全道展」奨励賞受賞 
   「第83回独立展」入選
2017 「第6回二十歳の輪郭」入選
2020 「ACTアート大賞展」入選
2021 「多摩美術大学美術学部卒業制作展」福沢一郎賞受賞
2023 「多摩美術大学卒業・修了制作展」辰野登恵子賞受賞     
   「face2023」入選 

 

Events

  

ギャラリートーク

4月5日(土) 18:00頃予定
ゲスト:三本松倫代

1974年東京生まれ。2003年より神奈川県立近代美術館学芸員。専門は近現代美術と表象文化論。近年の主な担当展覧会に「石田尚志 絵と窓の間」(2024年)、「100年前の未来:移動するモダニズム 1923-2023」(2023年)、「アレック・ソス Gathered Leaves」(2022年)、「みえるもののむこう」(2019年)。共著に『内藤礼 1985—2015 祝福』(millegraph、2015年)、共訳書にボリス・グロイス『アート・パワー』(国書刊行会、2017年)など。

普段の制作や生活、影響を受けた作家や出来事などについての話を行う予定。

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