
切れはしの交換
⽯河彩⼦ ⻑⾕部まり杏 WAKO
2025年5月16日(金)〜6月22日(日)
12:00~19:00(金・土は20:00 まで)火曜休場
本展示では作家3名が些細で言葉にもなりきらない、いわば言葉の切れはしのようなものを互いに交換するところからスタートしました。言葉の切れはしとは真っ白な地図の上に「何を描くのか」という方向を目指すためのコンパスのようなものです。
「何を描くのか」というところに、イメージないしはテーマを設けることは作品を作る上でのスタート地点とも言えますが、そのスタートの部分を他者に委ねるということは、絵の中の主体性を奪われかねないかもしれません。作品を作る上で、ある種一部分が、自分のコントロール下から離れた状況の中で絵を描くことになるとも言えます。
芸術家のアンディ・ウォーホルは日記の中で、他者との何気ない会話からひらめきやアイデアを得ていたと綴っています。日常の中にある自分にとっての心地の良いノイズを意図的に聴くことで、作品と他者が介入する関係性をうまくコントロールし、作品に生かしていたようです
互いに受け取った言葉の切れはしを、それぞれがどのように扱い作品に生かしているかは、展示が始まるまでお互いにわかりません。言葉の切れはしの交換という表現は、相手にその切れはしを渡す時点では、それが完全ではないことを指しています。絵を描き表現をすることで、切れはしは 1 枚の作品として成立することになるでしょう。
Artists
⽯河彩⼦
ISHIKO Ayako

1985年東京都⽣まれ
2009年武蔵野美術⼤学 造形学部⼯芸⼯業デザイン学科テキスタイル専攻卒業
2012年University of the Arts London卒業
美学校にて『第3期描く⽇々』(2021年)『ペインティング講座』(2022年~2024年)修了。武蔵野美術⼤学でテキスタイルデザインを学ぶ。フェルトを使った⽴体作品や、平⾯作品を制作。その後渡英し絵画作品の制作を始める。絵の中でしか存在し得ないリアリティや空洞化した時間軸をテーマに描いている。
⻑⾕部まり杏
HASEBE Maria

1994年⻑崎県出⾝
2018 年多摩美術⼤学 ⽣産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻卒業
2021年から2年間、美学校でドローイングとペインティングを学ぶ。2023年から長崎へUターン。自然のなかや街を散策して拾い集めたモチーフ・素材を使った作品作りや、テキスタイルの技術と油絵を組み合わせた表現方法を探っている。
WAKO

1994年生まれ 神奈川県藤野町育ち、東京都在住
2020年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了
COVID-19のパンデミックのなかで制作を開始し、2021年から3年間、美学校にてドローイングとペインティングを学ぶ。毎日のすぐそこに転がっている事物から絵を立ち上げ、ノーリーズンに描いている。主な展覧会は「’taidi people」(Gallery Blue 3143、東京、2025)など。
Events
トーク&オープニングレセプション
5月17日(土)
トーク 17:00〜18:30
オープニングレセプション 18:30〜20:00
ゲスト:佐藤直樹
多摩美術大学アートとデザインの人類学研究所所員。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科教授。
1961年東京都生まれ。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学・言語社会学を学ぶ。美学校菊畑茂久馬絵画教場修了。1994年、『WIRED』日本版創刊にあたりアートディレクターに就任。1998年、アジール・デザイン(現アジール)設立。2003–2010年、アート・デザイン・建築の複合イベント「セントラルイースト東京(CET)」をプロデュース。2010年、アートセンター「アーツ千代田 3331」の立ち上げに参画。サンフランシスコ近代美術館パーマネントコレクションほか国内外で受賞多数。2012年、「トランスアーツ東京(TAT)」を機に絵画制作へと重心を移し、「大館・北秋田芸術祭2014」などに参加。「札幌国際芸術祭2017」バンドメンバー。「東京ビエンナーレ(2020/2021、2023)」クリエイティブディレクター。3331デザインディレクター。
トーク
6月21日(土)
17:00〜18:30
ゲスト:長谷川繁
画家。1963年滋賀県生まれ。1988年愛知県立芸術大学大学院絵画科油画専攻修了。1989~92年ドイツデュッセルドルフクンストアカデミー、1992~94年オランダアムステルダム デ・アトリエーズ在籍。1996年帰国。東京を中心に個展、グループ展多数。帰国後自由が丘に展示スペースを設立し2004年まで若手アーティストの展覧会を企画。近年の展覧会は、2023年「1989-」横浜市民ギャラリーあざみ野(横浜)、2024年「MOTコレクション Eye to Eye – 見ること」東京都現代美術館(東京)、2025年「Van Gogh-Hiroshige」Vincent Van Gogh Huis(オランダ)ほか。