言ったことない息
栗田平手 詩霖 矢野紗季
2025年2月23日(日)~ 3月30日(日)
12:00~19:00(金・土は20:00 まで)火曜休場
必要なことを伝えた。聞かれた質問に答えた。
相手はそれに頷いて、私も頷いた。
「これで大丈夫、明日もよろしく」と言ったその口からはスースーと言葉にならなかった息が一緒に漏れている。
真昼の星、かつて建物が建っていた空き地、言葉にならなかった息。
星は決して夜になるのを待っておらず、空き地は建物を求めていなくて、私たちが言いたかったのは本当に言葉だったのか。
何かを作ることは、すでに世にあるたくさんの物たち、考えたちの間にわずかな隙間を見つけ点を打っていくような作業で、そんなことをどうしてもしてしまうのは、言葉にならなかった息の二酸化炭素で一杯になったこの自分がとても苦しいから、埋め尽くされた物たちや考えたちの間にわずかな穴を空け、外気を求める。
空けた穴から外気が流れ込んできてほっとするのもつかの間、その外気でさえ隣の誰かから流れ込んできたものであることに気が付き、慄く。
室内に安心できる場所を作ろうとすると部屋はどこまでも小さくなる。自分では入れない小さな部屋を作り人形を居させてまで、部屋は縮む。いつまでもそうしていることはやはりできず窓を開ければ部屋はどこまでも拡大していく。
3人は、すでに存在する他者や物体の中で自分がどう生きていけばいいのか、よくないのか、よくなくても良いから、そのようなことをずっと考えていた。
それらを考える場は縮小した部屋だったり、広がりきった野外だったり、外気との境に作った窓だったりした。
本展では3人各々が2階建てのこの会場を間取っていき、3つの部屋がクロスオーバーする空間を作ることになるだろう。
言ったことのない息で酸欠になった部屋から行ったことのない域へ、行き来を繰り返すこの部屋を、意味と意味の間に打たれる句読点のように、街の中に置く。
Artists
栗田平手
KURITA Hirate
1997年7月25日生まれ
この世に実在しない者たちを手がかりに、どうやって臆病なまま自分の命を使い切れるか、考えている。
主な展覧会
2022年 「拳に綿を詰める」ガーディアン・ガーデン(東京)
2022年 「P.O.N.D 2022 IN DOUBT /見えていないものを、考える」渋谷PARCO(東京)
2023年 「バグスクール:うごかしてみる!」BUG(東京)
2024年 「根源的生欲!展」ルンパルンパ(石川)
詩霖
Shirin
1997年7月22日生まれ
分析哲学の尺度で制作を含めての言語実践を行う。言語と他者性をめぐって、パフォーマンス、長期にわたるインストラクションや、他者同士の間に介在する接触可能な作品を制作。
主な展覧会
2024年 「我々は数多の知る由もない先行きの面影に沸き立つ」gallery αM(東京)
2024年 「Pass-spect-If」FAL(東京)
矢野紗季
YANO Saki
1998年2月7日生まれ
2021年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
近年は、場所、変化、役割をキーワードに、主に絵画を制作している。
Events
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